冷徹なカレは溺甘オオカミ
「メールには、足りない製品名と在庫数は書いてあった?」

「はい。現在の在庫は125kgで、オーダーは175kgです」

「そう。じゃあ、タイヨーテクニカに連絡して、オーダーよりも少ない数量の納入でもいいか確認して。あと、タイヨーテクニカはカンバン付きの出荷だったはずだから、納入数が少なくなる分余ったカンバンの処理方法も確認」

「了解です」



あっさりうなずいて、彼は自分のデスクへと戻った。

すぐに受話器に手をかけたのを確認して、わたしは手元の資料へと再び向き直る。

わたしたちの様子を何気なくうかがっていた同僚たちも、各々自分の仕事に戻るのがわかった。


……はい、こんな感じですよ。

“偽恋人”なんて言っても、所詮はフリ。本当に恋人らしく振る舞う必要なんてないのだ。

というか、そもそもここは仕事をするところなんだし、そんな期待されてもイチャイチャなんてするかってーの。

印南くんも、『“偽彼氏”に対する要望があれば遠慮なくどうぞ』なんて言ってたけど……わたしは別に、あれから彼に何か言ったりなんかしていない。

まあ、そりゃあわたしだって、もし彼氏ができたらしたいこととか、いろいろあったけど。でもそれって、ニセモノの印南くんに要求するの、ちょっと違うと思うし。

あくまで、彼はわたしに付き合ってくれてるだけ。“偽恋人”も、最初の業務命令の延長。

……期待なんて、してはいけないんだ。
< 81 / 262 >

この作品をシェア

pagetop