冷徹なカレは溺甘オオカミ
「柴咲さんは、いつもここでお弁当なんですか?」

「あ、うん。そうだよ」



玉子焼きに箸を伸ばしながらうなずけば、印南くんは早くも2個目のパンの袋を開けながら。



「ああ、社内に友達いないんですもんね」

「……そうですね。いろいろあって、距離おかれてますからね」



若干頬を引きつらせつつ、嫌味っぽくわたしは答える。

ほんとこの子、遠慮知らないよね。これは、こわいもの知らずなの?


そこでふと、印南くんがじっとわたしのことを見下ろしてきた。



「……違うでしょ?」

「え、」



その視線に、どきりと心臓が大きく鳴った。

何もかも見透かされそうな黒い瞳が、少しだけ細められる。



「距離を置いているのは、柴咲さんの方でしょ?」

「──、」



とっさに何も言えなくなって、言葉に詰まった。

まっすぐな眼差しから逃れるように、わたしは顔を逸らす。



「……わかんないよ、印南くんには」



つぶやいて、ぷすりとアスパラベーコン巻きに箸を突き刺す。

きっと、わからない。いろんなものに恵まれている彼に、劣等感だらけの、わたしの気持ちなんて。

それに、自分自身、情けないから──知ってもらいたいとも、思わないんだ。
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