冷徹なカレは溺甘オオカミ
……それに。



「……ダメだよ、印南くん」



そう言って、わたしはなるべく明るく、笑ってみせる。



「お昼休みに、ずっとわたしと一緒にいたりしたら……もしかしたら印南くんも、変な噂の対象にされちゃうかもしれないし」



まあそれは、わたしと付き合ってるという嘘をついてしまった時点で、今さらなことなのかもしれないけど。

でもこれ以上、自分の問題に、彼を巻き込みたくはなかった。


さりげなく印南くんから視線を逸らして、またお弁当に手をつけ始める。

だけど隣りから、なんだか尋常じゃない視線の圧力を感じて。

ミニトマトを口に放り込んでから、ちらりと、横目でうかがってみた。



「なに言ってんですか、柴咲さん」



そして、驚く。

わたしを見下ろして、そう話す彼が──無表情の中に、ちょっとだけ、怒りをにじませているような気がしたからだ。



「、いな」

「変な噂とか、別にそんなのは興味ないです。たとえば俺が陰で柴咲さんの飼い犬3号とか言われたって、別に全然気にしません」



いや、それは気にした方がいいんじゃないかな……。

頭の中では思うけど、彼のまっすぐな視線に気圧されて言葉が出ない。

そんなわたしをさらに追い立てるように、印南くんは少しだけ目を細めて、そして言い切った。



「──他人の勝手な評価に、傷つく必要はないです。俺が本当のあなたを知っているんだから、それでいいでしょう」
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