冷徹なカレは溺甘オオカミ
あまりにもきっぱりと言われたその言葉は、相当な衝撃で、わたしの心臓を撃ち抜いた。

……だって、そんな、『それでいいでしょう』って。自信満々に、決めつけられて。

なのに、なのに──……どうしてか今ものすごく泣きそうになってしまっているわたしは、自分が思っている以上に、そんな彼の言葉をうれしく感じているのかもしれなくて。



「……うん。そう、かも」



涙腺が緩みかけているのをこらえるためにわざと神妙な顔つきでうなずいてみせれば、彼はどことなく不満げに眉を寄せた。



「『かも』じゃないです。そうなんです」

「そっすか」

「急に雑になりましたね」



真顔でツッコまれて、ふは、とつい声に出して笑う。

ほんとにもう、この印南くんという人は、いつも予想外のことをしてくれる。

いつだって何を考えているのかわからない無表情なくせに、いきなりこんな、なんだか熱いことを言ったりして。


……ああ、なんか、まずいなあ。



「柴咲さんのお弁当は、手作りですか」

「あ、うん。そうだよ」



突然話題が変わったことに若干戸惑いながらも、答えた。

お姉ちゃんみたいに料理が得意なわけではないけれど、ひとり暮らし歴は長いから、いつも自炊はしている。

へぇ、とつぶやいて、彼はくしゃりとパンのパッケージを丸めた。



「今度、俺に作ってきてくれてもいいですよ」

「……作りません」



それは残念です、なんて口では言うけど、ほんとにそう思ってるんだか。

わたしは空になったお弁当箱を片付けて、いつも会社に持ってきているお茶入りのマグボトルへと手を伸ばす。
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