冷徹なカレは溺甘オオカミ
……かっこいいな、印南くん。

開き直ってるとか、諦めてるとかじゃなくて。どうしてそんなに自由で、いつも堂々としていられるんだろう。

きっと、心が強いんだろうな。わたしとは、全然違うところ。



「柴咲さん、明日いきなり、お昼休みに消えたりしないでくださいよ」

「え?」



パチン、とマグの蓋を閉めて、印南くんの方に顔を向けた。



「友達がいない柴咲さんは、明日からは俺と一緒にお昼食べるんですから」

「……あのね、印南くんわたしに友達いないいないって言うけど……一応わたしにも同期ふたりいて、しかも結構仲良かったんだからね?」



不満げにくちびるをとがらせてそう言えば、彼は小さく首をかしげて。



「で、その同期の方は今どちらに?」

「……女の子の方は入社4年目で寿退社して、男の同期は去年上海支店に転勤になった」

「やっぱりいないじゃないですか」



バッサリ断言されて、もはやぐうの音も出ない。

た、たしかにこの本社にはいないけど……でも一応、ふたりとは今も連絡は取り合ってるんだから!

そりゃ世間一般的には少ないけど、わたしにだって、友達はいるんだから!



「柴咲さん、今すごく、おもしろい顔してますよ」



そんな失礼極まりないセリフとともに、無意識にふくらませてしまっていた頬を、ぷしゅ、と人差し指でつつかれる。

驚いて視線を向ければ、いつもより目を細めて、少しだけ口角を上げた印南くんがいて。



「キスでもすれば、機嫌直りますか?」

「な……っ、」



かーっと、一気に顔が熱くなる。

頬に触れる手からあわてて逃れ、わたしはあくまで声の大きさは抑えながら抗議した。
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