冷徹なカレは溺甘オオカミ
「……“ディナークルーズ”?」
「はい」
紙に書かれた文字を読み上げたわたしに、こくりとうなずいて見せた印南くん。
手の中にある紙から、隣りにいる彼へと視線を移す。
「どうしたの? これ」
「ひとつの別れを経験した傷心の男からの、悲しみと切なさと少しの嫉妬がこもったプレゼントです」
「……意味がわからないんだけど」
思わず不満げな顔をして頭に浮かんだ通りの言葉を口にすれば、彼は左手で頬杖をついてこちらを流し見た。
「そのディナークルーズチケット、もともとは矢野さんが自分の彼女の誕生日のために、3ヶ月も前から予約してたものなんです」
「……なぜそのチケットが、ここに」
「なぜ、と訊かれれば簡単には言葉にできない事情があるのですが……まあハッキリ言ってしまえば、つい1週間ほど前矢野さんが件の彼女に振られたため、誕生日サプライズの必要がなくなってしまったからですね」
「それは……言葉にできないわね」
引きつった顔を見せるわたしに、「でしょう?」なんてさらりと言う彼。
それから印南くんは、わたしの手から2枚のチケットを引き抜く。
「実は昨日、その矢野さんを慰める会という名目の飲み会があったんです。で、そこで矢野さんが、『印南は俺みたいになるなよ! このチケットはおまえにやるから、柴咲さんと楽しんでこい!』と、溢れんばかりのオトコ気を見せてくれまして」
「……なんか、その様子だと溢れてたのは涙みたいだけど」
「そこはツッコまないであげてください」
「はい」
紙に書かれた文字を読み上げたわたしに、こくりとうなずいて見せた印南くん。
手の中にある紙から、隣りにいる彼へと視線を移す。
「どうしたの? これ」
「ひとつの別れを経験した傷心の男からの、悲しみと切なさと少しの嫉妬がこもったプレゼントです」
「……意味がわからないんだけど」
思わず不満げな顔をして頭に浮かんだ通りの言葉を口にすれば、彼は左手で頬杖をついてこちらを流し見た。
「そのディナークルーズチケット、もともとは矢野さんが自分の彼女の誕生日のために、3ヶ月も前から予約してたものなんです」
「……なぜそのチケットが、ここに」
「なぜ、と訊かれれば簡単には言葉にできない事情があるのですが……まあハッキリ言ってしまえば、つい1週間ほど前矢野さんが件の彼女に振られたため、誕生日サプライズの必要がなくなってしまったからですね」
「それは……言葉にできないわね」
引きつった顔を見せるわたしに、「でしょう?」なんてさらりと言う彼。
それから印南くんは、わたしの手から2枚のチケットを引き抜く。
「実は昨日、その矢野さんを慰める会という名目の飲み会があったんです。で、そこで矢野さんが、『印南は俺みたいになるなよ! このチケットはおまえにやるから、柴咲さんと楽しんでこい!』と、溢れんばかりのオトコ気を見せてくれまして」
「……なんか、その様子だと溢れてたのは涙みたいだけど」
「そこはツッコまないであげてください」