冷徹なカレは溺甘オオカミ
◇ ◇ ◇
あっという間に、ディナークルーズ当日はやって来た。
待ち合わせの朝日駅には、約束の10分前に到着。改札を抜けてすぐのところ、柱に寄りかかっているお目当ての姿を見つけて、わたしは足を早めた。
「──印南くん!」
声に気づいたその人物が、顔をあげる。
「柴咲さん。こんばんは」
「こんばんは。ごめん、待った?」
言ってから、ああこのやり取りってなんかデートっぽい、なんて思ってしまう。
こっそり恥ずかしくなっているわたしには気がついていないらしく、印南くんは体重を預けていた柱から身体を起こした。
今日の彼の服装は、紺色のジャケットに白シャツとチノパン。それにこげ茶色のチャッカブーツを合わせている。
……オシャレだなー、印南くん。
背が高くて足も長いから、細身のパンツがよく似合ってる。
「待ってませんよ。俺もさっき来たばかりです」
そう言ってくれる彼に「そっか」と返せば、印南くんは左手の腕時計に視線を落とした。
「それじゃあ、行きましょうか。朝日客船ターミナルまでは、ここから歩いて7分くらいです。……足元、大丈夫そうですか?」
「うん、平気」
大型とはいえ船だと多少揺れることもあると思ったから、今日は一応ヒールが低めなパンプスにしておいた。
わたしの答えにうなずき、印南くんが歩き出す。
途中、コンパスの大きい彼がわたしの歩幅に合わせてくれていることに気づいてしまって。ますますデートっぽい、と密かに顔を赤らめるのだった。