冷徹なカレは溺甘オオカミ
「……ああ。もしかして柴咲さん、」

「ん?」

「『美人』より、『かわいい』って言われる方がよかったですか?」

「か……っ」



つい大きな声を出しそうになったところを、あわてて飲み込む。

な、なんでそんな、恥ずかしいこと訊けるのかねこの無表情男子は……!!


思いもよらない言葉に、ボッと顔が熱くなった。

対して印南くんは、そのままものすごく自然な動作で、わたしの左耳に触れる。



「では、改めて。……いつもかわいいですけど、今日は一段とかわいいですよ、柴咲さん」

「~~~ッ」



驚きと羞恥で、もはや言葉も出ない。

こんな恥ずかしいやり取りをしているここは、ドアのすぐそばだ。さりげなく好奇の視線を向けながら、他の乗客たちがわたしたちの横を通り過ぎていく。


おそらく真っ赤な顔で口をパクパクさせるわたしを見下ろして、印南くんが満足げに口角を上げた。



「……うん。やっぱり、柴咲さんには“こっち”ですね」

「っえ、え?」

「『美人』と『綺麗』は言われ慣れてるから、『かわいい』の方が効果てきめん。しかもうれしそう」

「な……っ」



う、うれしそうって……!! なにそれ、勝手に分析すんな!!

そして実はちょっと図星っていうのが、また悔しいんですけど……!!


照れ隠しに睨みつけてみても、やはり彼は涼しい顔。

今にも噛みつきそうなわたしなんてお構いなしで、そっと腰に手を添えてきた。
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