この恋心に嘘をつく
無我夢中で走ってきたが、人通りは多いし、問題はないと思う。
むしろ、よくも知らない人の車に乗る方が危ない気がする。
「――乗って」
「…………は、い」
有無も言わさないその雰囲気に、つい頷いてしまった。
優しそうな人だと思ったけど、実はちがうのかもしれない。
「お、お邪魔します」
人生ではじめて乗る高級車に、緊張する。
内装もシートも、何もかもが予想以上で肩身が狭い。
(……帰ったら、防犯カメラ確認して、店長に連絡ついたかな?)
走り出した車は、驚く程、静かだ。
響くのはクラシック音楽だけ。
この状況から意識を逸らそうと、いろんなことを考えてみるけれど、やっぱり集中はできない。
(何か話すべき? でもなぁ……)