この恋心に嘘をつく

やっぱり、意地でも歩いて帰れば良かった。

不思議で意味不明なこの空気を味わうくらいだったら、どんなに遠くても、歩きますよ。


「なんで、あそこに? 制服ってことは、まだ仕事中、だよね?」

「あ~……万引き犯を、追いかけていたので……はい」

「万引き犯? いや、危ないだろ。もしも捕まえて、相手が襲い掛かってきたら」

「そう、ですね。それは……考えてなかったです」


捕まえることだけしか、考えていなかった。

そうか、相手が大人しくしている可能性、ましてや追いかけて来たのが女ならば、抵抗しないはずがない。


「それに、車にも轢かれそうになったし」

「……ご迷惑をおかけしました」


責められているわけではない。

その証拠に、男性の口元には笑みが浮かんでいる。


「えっと、安生――さんは、学生?」


胸元の名札を確認して、男性が問いかける。

< 18 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop