この恋心に嘘をつく
やっぱり、意地でも歩いて帰れば良かった。
不思議で意味不明なこの空気を味わうくらいだったら、どんなに遠くても、歩きますよ。
「なんで、あそこに? 制服ってことは、まだ仕事中、だよね?」
「あ~……万引き犯を、追いかけていたので……はい」
「万引き犯? いや、危ないだろ。もしも捕まえて、相手が襲い掛かってきたら」
「そう、ですね。それは……考えてなかったです」
捕まえることだけしか、考えていなかった。
そうか、相手が大人しくしている可能性、ましてや追いかけて来たのが女ならば、抵抗しないはずがない。
「それに、車にも轢かれそうになったし」
「……ご迷惑をおかけしました」
責められているわけではない。
その証拠に、男性の口元には笑みが浮かんでいる。
「えっと、安生――さんは、学生?」
胸元の名札を確認して、男性が問いかける。