この恋心に嘘をつく
「次? あぁ、缶コーヒーの人ね」
コンビニに来るようなタイプには見えなかった、背が高いスーツの男性。
確かに、カッコよかった。
「ああいう人を、紳士、って言うんですよね」
「……かもね」
缶コーヒーを手に、思い出す。
あんなお客さんばかりなら、接客業なんて全然苦じゃないのに。
「安生さん、金曜はお休みなんですね」
「……面接があるから」
「面接? もしかして、また――」
ガタンと大きな音をたて、椅子から立ち上がる。
「帰って寝る。――お疲れさまでした!」
驚く早さで着替えを済ませ、逃げるように事務所を出ていく。
「お疲れ様です。……また、落ちたんですね」
ポツリと漏れた言葉は、本人に聞こえぬまま、宙に溶けて消えた。