恋、物語り
………
頭がボーっとする。
告白されるんだろうなと安易に想像ついたけれど、まさかキスしてとせがまれているとは想像出来なかった。
ーー…『お願い、キスして』
ユウコの言葉が頭を巡って
何も考えられなかった。
小林くん、してないよね?
私、信じて良いんだよね?
そんなことを考えていたら、後ろからふいに抱きしめられた。
「ごめん、お待たせ!…帰ろう」
振り向いて見上げると、私の好きな彼の笑顔があった。
ホッと胸を撫で下ろす。
いつもと変わらない笑顔。
もうそれだけでいいと思えた。
「うん。帰ろう」
置いていたカバンを肩にかけて彼の手を握った。
繋がれた手から彼の体温を感じられる。
それが私を安心させた。
ユウコも来るんじゃないかという思いから
私はいつもよりずっと早歩きで彼と手を繋いで道を歩いた。