恋、物語り
彼は驚いた様子を見せたが、すぐに微笑んで「おはよう」と挨拶をした。
「…おはよう」
私もポツリと挨拶を返す。
「やっと、来てくれたね。学校、行こう」
そう言うと、彼は私の隣に並んだ。
少し痩せたかな?と思わせるのは、顔が少しシャープになっていたから。
行く道で会話はなかった。
時々天気いいね。なんて話してくれてはいたけれど、相槌を打つのが精一杯だった。
…彼と、隣で並ぶのがツライ。
学校につくと、2時間目が始まるところだった。
玄関で靴を履き替える。
彼も、同じように靴を履き替える。
ーー…彼が好き。
彼の行動一つ一つが、好きだと思った。
この人と離れたくないと思った。
彼を呼ぼうとしたところで「コバ!」と、ふいに呼ぶ声。
そう…彼女の声。
「遅刻じゃん!最近来てなかったから心配したよ!」
あははと大口を開けて彼女は笑う。
彼と、キスをした彼女ーー…
彼は私を見ていたけれど、パッと目線を逸らして。
「あ…私、先行くね」
そそくさと逃げるように階段を駆け上がった。
後ろから彼の私を呼ぶ声が聞こえたけれど、振り返ることはない。
彼とユウコが一緒にいるところなんて
見たくなかったのに……