恋、物語り
書いては消して
書いては消してを繰り返し
ようやく返信してのは
メールを見てから20分も後のことだった。
[こんばんは。
こちらこそありがとう。
下の名前で呼ばれるの好きだから
下の名前で呼んでくれたら嬉しい。
返信、遅くなってごめんね]
送信してから後悔の嵐だった。
ーー…こちらこそありがとうって何!?
ーー…下の名前で呼んでくれたら嬉しいってどんだけ上から目線?
ーー…返信遅くなってごめんねって最初につけるべきだったんじゃないかな?
一つのメールを返信するだけで
こんなにも緊張して
こんなにも手に汗をかくのは
初めてだった。
返信を待つ間も手の汗は止まらなかった。
隣からは姉の声がきこえる。
彼氏か、友達か、はっきり分からないけれど電話の声が聞こえる。
私が小学一年にあがる時に建てたこの家は
なんだってこんなに壁が薄いのか。
私の心臓の音も聞こえてしまうのではないか。
それを心配してしまう。