恋、物語り
持っている携帯を落としそうになりながら
彼に手を振った。
キョロキョロとしていた彼は私に気付いて
また屈託無く笑い、手を振りかえした。
上がる口角をそのままに
「ちょっと待ってて!」と言って
階段を駆け下りて玄関を開けた。
「立花さ……アヤ!」
彼は言い直して私に笑顔を向ける。
「本当に会えると思わなかった」
そう言って少し照れていた。
柄にもなく引き止めたが
話す言葉が浮かんで来ない。
沈黙が続いたのを破ったのは
やはり彼だった。
「ミツルん家でさ、皆でダベってたらこんな時間だよ。
明日起きれるか心配」
「小林くん、ミツルと仲良かったんだね。
私も中学同じクラスで仲良かったよ。
高校に入ったらミツルはさっぱり話してくれなくなったけど」
「あいつ照れ屋だからな」
そう言ってまた笑った。