恋、物語り




校門に近づくと
千夏が「あ!そういえば先生に渡さなきゃいけない物があるんだった!先行くわ!ごめん」と言って、立ち漕ぎして去って行った。

私たちは返事をする暇さえなかった。


「「……ぷはっ
千夏らしい~!」」

しばらくして私とミツルは笑った。



空を見る。
「ねぇ、ミツル?」
私の呼びかけに「んー?」と背を向けたまま答える。

「私、小林くんを好きになることあるのかな?」
ドキン…と、波打つ鼓動。
指先までドクドクと血が流れる感覚がわかる。

「さぁな」……ミツルは首をかしげてそっけなく言ったあと、
「でも、まぁ…お前が自分の気持ち認めたらそうなるんじゃねぇの?」と続けた。


今、認めたら好きなんじゃないの?と
言われている気分だった。


中学の頃、好きだった先輩の顔が浮かんだ。
あの時は先輩を見る度に動けなくなる程ドキドキして
この人の空気が好きだと思った。

でも、“この人が好き”とは思わなかったかもしれない。



どこが好きか聞かれたら
きっとこう答えただろう。

雰囲気と発するオーラが好きーー…


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