恋、物語り
教室へ向かう途中
「アヤちゃん!」と名を呼ばれ振り返る。
ごちゃごちゃした人混みから
その声の主を探すと
立っていたのは4組の女子2人。
「ちょっといい?」と言われ
ナツキと2人で立ち止まった。
その中の一人がすぅーっと息を吸って
はぁーっと吐いた。
そして私を睨みつける静かに話し出す。
「コバと付き合うの?」
真剣な眼差しに緊張して、少し怯んで下がった。
トンとぶつかった何かを見上げるとナツキ。
私はまたその女子を見つめる。
「わからない…。」
そう言うと、女子2人で痰を切ったように
私をまくし立てた。
「わからないとか、そんな気持ちなら
付き合うのやめて!
好きじゃないならやめて!
それなのに連絡先交換したり…やめてよ!」
「そうだよ!
そんな簡単な気持ちなら誰だっていいじゃん。
連絡先聞かれたからって好きでもない奴に
普通教える!?」
ギャーギャー騒ぐこの2人に
ナツキは心底嫌な顔をしていた。
私も呆気にとられて言葉を失う。
「好きになれればいいな、と思ってるよ」
そう反論したらもっとヒートアップしてしまい
もう何を言っているかわからない。
分かることは
時々騒いでる中に出てくる“ユウコ”という子が“小林くんを好き”と言うこと。
「私なんてずっと好きだったのに!」
そう、叫んで泣き崩れてしまった。
………
どうすれば良いのか、わからなくて
立ちすくんでるところに
ナツキが話出した。
「あのさぁ……」