恋、物語り




授業が始まるからと、
私たちは休み時間終了10分前に屋上を出た。

教室までの道のりが少し遠く感じる。

「アヤ、なんか変だよ」

中島くんと話してから
ずっと、ずっとドキドキしている。
火照る顔が冷めやまない。


「あ、コバだ」

ーー…ドクン。


ナツキが言うほうを見上げると
長い長い廊下。
廊下の片隅に小林くんと中島くんと
その他友達がたくさんいた。

小林くんは私に気がついて
屈託無く笑い、手を振って来た。


振り返す手が空気に触れて熱を冷ます。


「アヤ、今日会うの初めてだね」
そう言って照れる彼。
「うん…そうだね」
笑顔が少し引き攣る。


そんな私なんて気にも止めずに
小林くんは話を続けた。

「今日もミツルん家行くけど
アヤも来ない?
千夏ちゃんも来るって言ってたよ」

「あ、ほんと?じゃあ行こうかな」

「うそ!来られるの!?
やったー!ダメ元で聞いてみたんだ」

「うちの親そんな厳しくないから。
ミツル地元一緒だし。」

やったー!と喜んでいる彼は
本当に自分の気持ちに素直な人。




………あ、あの…」



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