恋、物語り



会場に近付くにつれて人が多くなっていく。
親と来ているが、テンション上がって騒ぐ子どもたち。
友達と来ている人たち。
高齢のご夫婦。
付き合ったばかりであろう初々しいカップルに、慣れたように手を繋ぐカップル。


そんな人たちを横目に、自分も浴衣を着ているというだけで少しだけテンションが上がった。


鼻歌でも歌いたい気分になる。
でも、当たり前だけどそれは出来なかった。



待ち合わせ場所まで後少し…
後少しだった。

ふと、目線を感じて横を見る。


ドクンーー…
鼓動が早くなる。
足が震えた。


あまり背の高くない彼。
特別体格が良いわけでもない彼。

けれど、あの大きな手。
私を見つめるあの瞳。


「…小林、くん……」


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