恋、物語り
彼は私を見ていた。
驚いた様子で見ていた。

周りの人たちなんか目にはいらない。
ザワザワしているお祭り会場。
それなのに、私と彼しかいないような、そんな感覚。



なぜ…
なぜ、この地元のお祭りに…?

いくつかの疑問符が頭に浮かぶ。


ザッーー…
慣れない下駄が地面を削る音がする。


彼は一緒に来ている友人に何かを告げて、こちらへ向かって来る。
一歩進むごとに近付く彼との距離。


逃げ出したい。なのに、動けない。
あと数メートルの距離で
ようやく私の足は動いた。


…彼から逃げるようにその場から走った。


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