恋、物語り
それなのに、彼は
「あぁ、良かった」
そう言って屈託無く笑った。
「俺、別に気にしてないよ。
だから、ア…立花さんも気にしないで」
ーー…立花さん?
アヤと言おうとしたのを言い直して。
私は、過去になってしまったの?
「うん、そうだね」……
じゃあね、と言ったあと
何かを思い出したかのように私をみて
「浴衣、似合ってるね」と言って彼は去って行った。
私を好きと初めて言ってくれた男の子。
優しくしてくれた男の子。
フラれてもこうして話しかけてくれる男の子。
…私が泣くのはお門違いだ。
小林くん、
話しかけてくれてありがとう。
でも、立花さんは少し嫌だった。
そう思う私はやはり自己中心的だと思った。