恋、物語り
「……帰る」
一言呟いて足早にその場を後にした。
みんなが私を呼ぶ声が聞こえたけど、振り向かなかった。
……涙が出る。
頬を伝うその涙は、止まることなく溢れてしまった。
止まれ、止まれーー…そう願ったりけれど、その願いはことごとく裏切る。
夏の夜。
彼と…小林くんと話した最後の夜を思い出す。
暑い夜だったのに、体は冷えていた。
まさに、今まさに私の体は冷えている。
私、悪いことした?
小林くんを好きになりたいと思った。
でも、突然現れた中島くんに恋をした。
私の感情を操れるのなら
誰か操って弄んでくれて良い。
「…っ、グス…」
涙を賢明に拭っても
拭っても、拭っても…止まらない。
ねぇ、誰か、私を救って。