恋、物語り
「帰ろう。送るよ」
そう一言呟いて彼は私の隣を歩く。
それほど背の高くない彼でも、見上げないと顔が見えない。
月明かりが眩しかった。
帰り道は少ない外灯ばかりで、私は安堵する。
泣き顔を見られるのが嫌だった。
「……アヤ?」
「え?」
ふいに呼ばれ返事を返したが、返答はない。
彼の顔を見上げる。
いつも見せる屈託のない笑顔はなかった。
「ごめん、俺のせいだよね」
「…違うよ。私のせい」
彼が自分を責めるのは違う。
彼は何も悪くないのだから。
「アヤ、、聞いたんだけど」
彼が足を止めるから、私もその場に止まった。
彼が私を見るから、私は彼を見られなくなった。
真っ直ぐに見つめられると、少し困惑する。