恋、物語り
宿題で出たプリントをバッグにしまって、9時半に家を出た。
駅に向かう途中、やはり太ったネコに遭遇した。
ネコのわりに人懐っこくてすごく可愛い。
「バイバイ」そう言って駅に向かった。
電車に乗ると心臓がギュっと縮まった。
自分の心臓の音で世界が揺れる。
あと二駅…あと一駅…
近づく度に心臓が痛い。
降りる駅のアナウンスが流れると、バッグを手にして、降りる準備をした。
ーー…キキーっと大きな音がなって電車は止まる。
ドアがあく。
一歩、一歩、足を踏む。
改札を抜けると、彼は立っていた。
ドクンーー…
心臓が高鳴る。
それほど背の高くない彼。
でも、その姿形はすごく綺麗だった。
長くて大きな手が頭を一つ掻いて、こちらを見た。
ーー…彼は屈託のなく笑った。