痛々しくて痛い
「い、いや、違うって。あれは別に綿貫の事を怒ってた訳じゃなくて…」


麻宮君にしては珍しく、アタフタとした口調で続けた。


「渡辺達のやり口に、あまりにもイラッときてさ」

「…やり口?」


何故かその憎々しげな言い回し、声音が大いに引っ掛かり、思わずポツリと呟いてしまった。


「あ~…」


しばし言い淀んだあと、麻宮君は観念したように語り出した。


「実は俺、研修期間中に、渡辺に告られててさ…」

「え。そ、そうなんですか?」

「うん。アイツとは説明会の時からちょこちょこと顔を合わせてて、その頃から俺のこと気になってたんだと。で、研修でさらに深く接して行くうちに、ぜひとも付き合いたいって思うようになったんだってさ」


他人が自分を好きになった経緯を説明するという行為はすこぶるこっ恥ずかしいようで、麻宮君は顔を赤らめながら話を進めた。


「でも俺、その時はまだ大学時代の彼女と続いてたから、丁寧にお断りしたんだよ。そんであっちも『分かった』って納得したハズだったのに…」

「それで終わりでは、なかったんですか?」

「そう。仕事終わった後や休日に、バンバンメールや電話が入るようになって、口調もだんだん馴れ馴れしいものに変わって行ってさ。当然、彼女が横に居た時もあったから『誤解されるような事は止めてくれ』って抗議したんだけど…」


そこで麻宮君は深く眉間にシワを寄せた。
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