痛々しくて痛い
「最初に会った時から、私はそのニオイを嗅ぎ取っていたよ」


手にしていたビニール袋を机上に置くと、絹田さんは大庭さんのデスクからウェットティッシュの容器を取り上げ、中身を引き出してから染谷さんへとリレーした。


「しかもいやらしい、計算づくしの養殖ボケじゃなくて、正真正銘、ほんまもんの天然に違いないってね」


ティッシュで両手をふきふきし、次いで机の上をサッサとなでた後、お役ゴメンになったそれをゴミ箱に落とし、絹田さんは隣の私に向かってニッと笑いかけた。


「……え?」


きっと私は今、とんでもなく呆けた表情になっている事だろう。


「そうそう。コイツは本物ですよ。はぁ~、もう。腹いてーし呼吸は上手くできなくなるし、死ぬかと思った…」


その間に麻宮君の笑いの発作はどうやら治まったようで、そう呟きながら、目尻に浮かんだ涙をそっと指で拭っていた。


「しかし、純粋な天然が5人中2人もいるだなんて、よくよく考えたらなかなかのミラクルだよなぁ…」


カウンターに移動して、お茶の準備をしていた染谷さんがしみじみとした口調で言葉を発した。


「今後が楽しみなような、それでいてちょっと怖いような…」

「ん?2人?」


パックの野菜ジュースと、オムライスのお弁当をいそいそと袋から取り出していた大庭さんは、その手を止めて振り向きつつ問い掛ける。
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