痛々しくて痛い
これ以上ないほど恵まれているじゃないか。


その事を常に念頭に置いて、無駄にネガティブにならないよう自分自身を律しながら、これからの新生活、頑張って行ってみよう。


『あ、それでさ』


一瞬しんみりとしたムードが漂ったけれど、その空気を変えるように優子ちゃんが陽気に声を発した。


『もう一個聞きたい事があったんだ。何日か前に高校のクラス会のお知らせ、届かなかった?』

「あ、うん」

『実家のお母さんから連絡来てさ。私自身はまだ現物見てないんだけど。明日の昼間にでも取りに行こうかなと』


優子ちゃんはデビューと同時に上京し、現在も同じアパートに住んでいた。


別に都内在住じゃなくても漫画家活動はできるらしいけど、一度は一人暮らしというものをしてみたかったということと、家族に気兼ねせず、作品を生み出す事だけに集中できる空間、時間を確保したいという思いから、家を出る事を決意したのだった。


そして、どうせ住むならこれから何かとお世話になる出版社の近くに、となったらしい。


もちろん、当時まだ大学生だった優子ちゃんが、通学の利便性もきちんと考えた上で下した決断だ。


でも、絹田さんの言葉を借りるなら、都内はホント「すぐそこ」と言えるくらいの距離なので、スケジュールの問題さえクリアすれば会うのは簡単だし、また、優子ちゃんは定期的にちょこちょこと実家に顔を出しているようだ。
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