痛々しくて痛い
「そもそもこの職場にその制度を取り入れたのはオレなんだからねっ。オレの事こそ、ファーストネームで呼んでちょうだいよ!」

「……っていうか、何で大庭さんてそんなに名前呼びに拘ってるんですか?」


麻宮君は心底不思議そうに問い掛けた。


「何故にそんなに必死になっているんでしょうか?」

「だ、だってオレ、『大庭』って呼ばれると、すっごくモヤモヤするんだもん」


唇を尖らせながら、大庭さんはブツブツと呟いた。


「何故なら名字をもじったお約束ギャグで、必ず大バ…」「カ?」


絶妙なタイミングで絹田さんが言葉を補う。


「そう!小さい時から、散々そうやってからかわれて来たから」

「名字だけが理由ではなさそうだけどね」

「え?」

「いや、何でもない」


「……とにかく、オレにはそういった悲しい過去の記憶があるワケ。だから極力それを思い出さずに済むように、ファーストネームで呼んで欲しいの!」

「わ、分かりました」


何だか彼がとても気の毒になって来て、私は急いで宣言した。


「これからは大庭さんのこと、颯さんて呼ばせていただきます」

「いや、俺もそうさせてもらうつもりではいますけど」

「!ありがとー!」


私と麻宮君の回答に、瞳をキラキラと輝かせ、満面の笑みを浮かべて、この上なく嬉しそうな表情で颯さんは礼を述べた。
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