痛々しくて痛い
「そうですね…。平日はなんやかんや忙しくて、ちょっとしか時間が取れないし、休日にある程度進めるとしても結構長期戦になるかも」

「仕事の方がこれからますます忙しくなって行きそうな感じなのに、それでさらに休日まで潰れちまって、体は大丈夫なのか?」

「あ、うん。それは大丈夫です」


綿貫はアセアセ、という感じで弁解した。


「編み物は私にとっての癒しの時間だから。毛糸を触っているだけで、とっても幸せな気分になれるのです」

「…へ、へぇー。そうなんだ」


俺は一瞬ドキリとした。


その言葉を裏付けるように、綿貫がほんわかとした、極上スマイルを浮かべたというのもあるけれど、視覚だけではなく、聴覚からの情報でも、何かが俺の心の琴線に触れた。


『ケイトをさわっているだけで、とってもシアワセなキブンに…』


何だ?

一体、何が俺の心に引っ掛かったんだ?


「おはようー」


するとその時、勢い良くドアが開かれ、樹さんが入室して来た。


「あ、おはようございます」
「…おはようございます」


「早いな二人ともー」


快活な声でそう言いながら、樹さんは室内を横切り、自分のデスクまで一直線に向かった。


端末を立ち上げる彼の姿を何となくぼんやりと眺めていると、すぐに颯さん、そしてあまり間を置かずに伊織さんが出勤して来る。


途端に賑やかになる室内。
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