痛々しくて痛い
「純粋にそう思っただけだからね。それに、今はもうその疑問は解消されているし。綿貫さんの日頃の働きを見れば、いかに真々田屋に愛情を注いでいるかという事が、ヒシヒシと伝わって来るもの」

「そ、そうですか?」

「うん。綿貫さんは正直、押しの強さっていうものはないけど、むしろその一歩引いた接客態度がお客様達に好印象を与えていたしね」


一旦話を止め、店長は残りのコーヒーを一気に飲み干し立ち上がる。


次いで、出入口付近の給湯設備に近付くと、流し台の前に立ち、カップを洗いながら続けた。


「わざわざ綿貫さんのシフトに合わせてお買い物に来る常連さんもいらっしゃったし」

「えっ。ホントですか?」

「本当よ。ほら、田中さんとか佐藤さんとか」


その言葉によって、私の脳裏に、ある二人の女性の姿が浮かび上がった。


60代後半の、ふっくらとして上品な雰囲気を醸し出している田中さんと、幼稚園に通うお子様がいる、30代半ばの明るく元気な佐藤さん。


確かにお二人とも、私にとても良くして下さっていた。


田中さんは洋服、佐藤さんは小物類を作るのがお得意で、週に一度はここを訪れる常連さんだった。


まだ仕事に慣れていない頃、手際が悪く、大分お待たせしてしまったのにも関わらず、嫌な顔一つせず、むしろ私の緊張を解きほぐすように、優しく話しかけて下さった。
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