痛々しくて痛い
若干遅れて、カウンター前から染谷さんを元気良く見送ったあと、颯さんはその場を離れようとしていた伊織さんを呼び止めた。


何やら質問をし、そのまま会話を交わしつつ二人は鉄庫前へと移動して行く。


おそらく何かの書類を探し出す為だろう。


私もそこでようやく腰を上げ、残るは麻宮君だけとなったカウンターへと近付いた。


「もし無理そうだったら、早めに断れよ」


ポットからお湯を注いでいる最中、用は済んだ筈なのに何故か私の横に佇んでいた麻宮君が、おもむろに口を開いた。


「え?」

「この前言ってただろ?結婚式のウェルカムドールを頼まれたって」

「あ、うん…」

「これからこの部署は本格的に忙しくなりそうだし、精神的にも体力的にも余力は残しておいた方が良いぞ。ボランティアで人形作りなんかしてる場合じゃない」

「え?そ、そんな、大丈夫だよ」


心底仰天しつつ言葉を返した。


「結婚式はだいぶ先だし、毎日ちょっとずつ進めれば、充分終わると思うし…」


麻宮君の中でハンドメイド関連の話はまだ終わっていなかったらしい。


「それに、別にボランティアじゃなくて、それにかかる費用はちゃんと出してもらう約束だから。優…」


名前を出しそうになって慌てて言い換える。


「…そのお友達は、そういうとこ、きちんとしているから」


この前も危なかったんだよね。
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