痛々しくて痛い
「とにかく、綿貫さんにとって本社への異動はその能力を最大限に活かすまたとないチャンスなんだから。もちろん、仲間達とも協力しつつ、若いパワーでますますこの会社を盛り立てて行ってよ」


言いながら、店長は私の肩にポン、と右手を置いた。


「て事で、私は先に仕事に戻るわね。時間までゆっくりしてて」

「あ、はい」


ドアへと向かう店長に、さらに私は言葉を投げ掛けた。


「励まして下さってありがとうございました。残り少ないですが、こちらでの勤務も最後まで精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」

「こちらこそ。よろしくね」


店長は笑顔で振り向きそう言うと、ドアを開け、右手を軽く上げてから足早に部屋を出て行った。


私は思わず『ふ~』と息を吐いた後、チラリと壁掛け時計に視線を走らせる。


…勤務開始まで、まだだいぶあるな。


まずは着替えてっと。


その後ゆっくりコーヒーでも飲んで、イレギュラーな動きで高ぶった神経を落ち着かせる事にしよう。


心の中でそう呟きながら、鞄を手に衝立で仕切られている部屋の奥のロッカー前へと移動した。


扉を開け、棚の上に鞄を置いてから、コートを脱ぎハンガーにかける。


次に、その下に身に付けていたスーツのジャケットも脱いで一旦左腕に引っかけてから、もう一つのハンガーにかかっていたカーディガンとエプロンを外し、入れ違いにジャケットをかけ直した。
< 31 / 359 >

この作品をシェア

pagetop