痛々しくて痛い
仕事中、プライベートな事で多大なるご迷惑をおかけしてしまったというのに。


何でだろ。


何で皆さん、あんなに良い人なんだろ…。


ぼんやりとしながら着替えを済ませ、エレベーターホールへと向かい、到着した箱に乗り込んで1階に降りる。


ロビーを横切り玄関を出て、駅前目指して歩いている間に、だんだん、だんだんと疲労感が増して行った。


あの麻宮君と喧嘩をしてしまった…。


勘違いや思い込みではなく、正真正銘の、仲直りできる余地がまるでなさそうな本気の喧嘩を。


今度こそ、完璧に、嫌われてしまったかもしれない。


そこまで考えた所で、慌ててその思考をシャットダウンした。


心が折れてしまいそうだったから。


今にも足元から崩れ落ちて、この場に倒れ込んで、泣き出してしまいそうだったから。


多くの人が行き交うこんな場所で、そんな醜態を晒す訳にはいかない。


しかも私にはこの後まだ、皆さんのお心遣いに応えるべく、医師の診察を受けるという、重大なミッションが残されているのだから。


家に無事帰り着くまで、何とか自分を保っていなければ。


頑張れ、愛実。


ここが踏ん張り処だ。


そんな風に自分自身を叱咤しながら。


私は一歩一歩、力強く、前へ前へと進んで行ったのだった。
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