痛々しくて痛い
「も、もちろん、覚えてます」


麻宮君ほど印象的な人物を忘れる人などそうはいないだろう。


というか、記憶にあるか否かは本来私が口にするべきセリフだったと思う。


ほとんど接点のなかった私の顔とフルネームを覚えていてくれて、なおかつ、人波でごった返しているその場所で、すぐに気付いてくれるだなんて。


まぁ、私のビジュアルが、高校生の時から止まっていたというのもあるのかもしれないけど…。


「若く見える」なんて良いものではなく、ただ単に、ある程度着飾る事が許されている年齢にも関わらず、どうにもこうにも垢抜けない風貌だったから。


髪型は真ん中分けのショートボブで染めてもいないしパーマもあてていない。


一度そういったアレンジを加えてしまうと、その後のメンテナンスが大変だという事は家族や友人達からの情報で分かっていたので、私はナチュラルな状態をキープしていた。


そしてそれは今現在も続いている。


一方麻宮君は、高校時代はツンツンと立ち上がるほど短髪だった髪を伸ばし、色は黒のまま、前髪を7対3の割合で左分けにして流して全体的にふんわりさせるというスタイルにしていた。


何て言う名称なんだかは知らないけど、とにかく社会人として許される範囲内で上手にお洒落を楽しんでいる、『今風の若いビジネスマン』といった感じだった。
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