痛々しくて痛い
しかし。


次の瞬間、山本さんと高橋さんにすこぶる怪訝そうな表情で見られてしまい、情けない事に、それ以上言葉が紡げなくなってしまった。


「あ。もしかして、例のやつ持って来てくれたの?」


だけど、すぐに渡辺さんが陽気に問いかけてくれたので、心底安堵しつつ彼女に向けて返答する。


「は、はい」

「わー!ありがとう!」


笑顔でそう言ったあと、渡辺さんは両隣に立つ二人に交互に視線を配りながら解説した。


「ホラ、昨日話したじゃん。綿貫さんに卒アル見せてもらう約束したって」

「ああ……」

「そういえば言ってたね」

「ただね、私、綿貫さんに謝らなくちゃいけない事があって…」


再び私に向き合うと、渡辺さんは眉尻を下げながら続けた。


「ゴメン!よくよく考えたら私、卒業アルバムは実家に置いてきちゃってたんだよねー」

「え?」

「今のところ仮住まいだから。必要最低限の荷物しか持って来なかったんだ。だから綿貫さんに見せてあげられないの。自分から言い出したのに、ホントゴメン!」


言いながら、彼女は両手を顔の前で合わせて頭を下げた。


「あ、そ、そんな…」


そういう事情なら、仕方ないよね。


新入社員は全国津々浦々から採用され、その後各地にある店舗にバラバラに配属されるので、当然、その段階で都内、もしくは近郊住まいではない人も多数いた。
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