痛々しくて痛い
そういった人達は研修の間はマンスリーマンションを利用しているという話だった。


私のように実家から通っていた人の方がむしろ珍しかったのだ。


研修を終えたあとは、そこから速やかに引き揚げなくてはならない。


だからなるべく荷物は減らしたかっただろうし、私にとってはそんなに重要性のある約束じゃないんだから、卒業アルバムを見せてもらえなかったからといって責めるつもりは毛頭なかった。


「でも、綿貫さんは持って来てくれたんだもんね」


すると、高橋さんが淡々とした口調で言葉を挟んだ。


「せっかくだから見せてもらおうよ」

「そうだよね。良いよね?」

「あ、は、はい」


山本さんにも畳み掛けるように言われ、慌てて頷くと、私は自分の席までとって返した。


…良かった。


最初、二人の視線がすごく冷たいように感じられてしまったけれど、今は大分穏やかな表情になっていた。


今日までほとんど会話を交わした事のなかった私が突然接近して来たりしたんだから、そりゃ大いに戸惑っちゃうよね。


自分にそう言い聞かせながら鞄を開き、中からアルバムを取り出すと、私は再び3人の元へと歩を進めた。


「ありがとう!」


自分の席に腰掛け、笑顔で待ち構えていた渡辺さんは、そう言いながらアルバムを受け取ると、素早くケースと分離させ、それぞれを机の上に置いた。
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