痛々しくて痛い
「基本セルフサービスで、飲みたい時に飲みたい物を飲んで良い決まりになってるんだ」

「そ、そうなんですか…」


絹田さん染谷さん大庭さんに畳み掛けるようにそう言われて、それ以上『いえいえ私が!』と言い張る度胸もなく、結局そのまま大人しく椅子に座り直してしまった。


麻宮君も恐縮したように大庭さんの方を向いて「すみません」と言葉を発している。


「おまたせー」


トレイを手に大庭さんが近付いて来て、私と麻宮君のデスクのちょうど真ん中辺りにそれを置いた。


「悪いけどこれ、回してくれる?茶色のカップが樹さんで、黄色の水玉模様が伊織さん」


「…え?」

「いつきさんといおりさん…?」


私と麻宮君は思わず同時に声を上げた。


「あ、ゴメンゴメン。染谷課長と、絹田さんの事ね」

「え?名前で呼んでるんですか?」


私も抱いた疑問を麻宮君が代弁してくれた。


「あ~、うん…。オレ、ちょっとでも親しくなった人の事はファーストネームで呼びたくなっちゃって…」


大庭さんはまるで叱られた子どものように気まずそうな表情になると、歯切れの悪い口調で続けた。


「で、でも、強制はしないから。二人は普通に名字で呼んで良いよ」

「つっても、名前呼びしてる奴が一人でもいると、ついついこっちもつられちまうんだけどな」


染谷さんが苦笑いしながら会話に加わった。
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