痛々しくて痛い
「そのやり取りを、比較的他の社員よりも多目にやってたってだけで、棚からぼたもち的にこのポジションに就いちまったんだから」


そこで染谷さんは絹田さんに視線を向けた。


「だから業務を進める上での主導権は彼女に握ってもらおうと思ってる。俺なんかより的確で、効率的な指示を出してくれるだろうから」

「ちょ、そうやって無駄にプレッシャーをかけるのはやめてもらえます?」


今度は絹田さんが苦笑いを浮かべる番だった。


「私だって大した経験値なんかないですよ」

「まーたまた~。だって、ここに転職したのって、要するにヘッドハンティングだったんだろ?」

「違いますよ。前の職場では中々一人立ちさせてもらえなくて、入社7年目にしてやっと某大手企業のCMをメインで任されたと思ったら『例年通りでよろしく。余計な変化はつけないで』なんて言われて、結局前任者が作り上げたテンプレに沿った仕事しかできなくて、モチベーションだだ下がりの時に人材紹介の会社から連絡が来て…」
「やっぱりヘッドハンティングじゃないか」


「いやいや、色んな人に声かけてたみたいですよ。『何人かいらっしゃる候補者のうちのお一人です』って、堂々と言われましたもん。要するに早い者勝ちだったって事ですよ。で、真っ先に食い付いたのが私で、後はトントン拍子に話が進み、今に至ると」
< 84 / 359 >

この作品をシェア

pagetop