あなたと月を見られたら。


フゥと安堵のため息を漏らした後、私は玲子先生の真正面に腰を降ろした。


それと同時に龍聖がメニューを持ってやってきたけれど私は彼の目を見ることなく、そそくさとアイスコーヒーを注文。玲子先生がブレンドを注文すると、龍聖はニッコリと微笑んで


「では今日のカップはいかがなさいますか?」


と質問する。



はぁ?カップ??



意味がわからず首をかしげると


「そうねぇ…。今日はエルメスにしようかな。エルメスの赤のカップってあるかしら。」

「はい、ありますよ。ではそちらに淹れてお持ちしてもよろしいですか?」

「ええ、お願い。」

「かしこまりました。」


龍聖はニッコリと微笑むと颯爽とした姿で去って行った。


視界の中から消えてなくなり、足音だけ、衣擦れの音だけが聞こえて感じる龍聖。とりあえずホッと一安心してため息を漏らすと


「ここのお店はね?コーヒーカップが選べるの。」

「え?カップが選べるんですか?」

「そう。マスターのこだわりでね?お客様の気に入ったカップで好きなコーヒーを飲んでもらいたいんですって。マイセンに、ウエッジウッド。日本のものだとノリタケもあるし、ティファニーにエルメスなんかもあるの。どれも本当に可愛くて素敵なカップだからいつも悩んじゃうのよねぇ。」



玲子先生はそう言ってホゥっとため息を漏らす。



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