あなたと月を見られたら。
む、無理!
毎回ココで打ち合わせなんてしたらストレスで禿げちゃう!!
「だめです、先生!経費の問題もありますからっ!」
カバンの中からスワロフスキーのボールペンを取り出して、お仕事の話に無理やり戻そうとすると
「あら、可愛いわね、そのボールペン。」
玲子先生が私のボールペンをゆっくり指さす。
「あ……コレですか??コレ…自分へのご褒美に買ったんです。フタの後ろに印鑑もついてるし…かわいくてお気に入りなんです。」
ボールペンの内部にキラキラと光るクリスタルが180個入っているスワロフスキーのボールペン。シャープペンとセットになっている、このボールペンは今の私の一番のお気に入り。
仕事がうまくいかなかったり、悩んだりした状況でも、このペンの中にあるキラキラ光るクリスタルを見ると気分が上がる。あともうちょっとだけ頑張ろう、そう思える。
このペンは私にとってなくてはならない、相棒みたいな宝物みたいなペンなんだ。
照明の光に反射してキラキラ光るクリスタルを見つめながらボールペンを指先でクルクルと回していると
「ペンが自分へのご褒美かぁ…。それ、ネタに貰ってもいい??」
「へっ?どういうことですか??」
「ほら。自分へのご褒美がスウィーツとかアクセサリーって平凡じゃない。コレなら意外性があってオシャレだし…何より知的なイメージが持てるわよね。」
玲子先生はポンポンと次回作のアイデアをつぶやき始める。
「次の作品はね?お一人様生活をこじらせすぎて恋愛休憩中の女の子を主人公にしたいな、って思ってるの。」
そう言って玲子先生は龍聖の淹れたコーヒーをコクンと一口、喉の奥にゆっくりと流し込んだ。