あなたと月を見られたら。
イジワルだけど、甘くて優しい、私だけの龍聖。
私の心は愚かにも龍聖に向かって傾いていく一方で、会うたびに、触れ合うたびに気持ちを抑えられなくなっている。
彼は決して「愛してる」とは言わないけれど、触れ合うたびに、抱き合うたびに微かにつぶやく「好き」の言葉が嬉しくて、彼の柔らかな視線が嬉しくて、バカな私は勘違いしそうになってしまう。
この恋は期間限定で、お試しなのに……こんどは本当なんじゃないか、って。こんどこそ彼と愛し愛され、想い合う恋が出来るんじゃないか、って…幸せな夢を見そうになる。
だけど、そんな自分がたまらなく怖くなる。
多分、私は龍聖のことが気になってる。大好きに一番近い気持ちで気になってる。きっと、決定的な何かがあれば私の気持ちは堰を切って溢れ出して…それこそ龍聖に向かって一直線に流れ出してしまう。
だからこそ、怖いんだ。
ここでもし龍聖に裏切られたら、ここでもしこの前と同じようなことになって傷つけられたら、今度こそ私の心が壊れてしまう。そうなってしまったら私はきっと、もう恋なんて出来ない。
ーーヤなオンナ……。
ズルくて、怖がりで、臆病で弱虫な私はね??自分が傷つくのが怖いから、退路が断たれてしまうのが怖いから、決定的な言葉を龍聖に打ち明けられずにいる。
龍聖のことを信じたいけど、信じることが何よりも難しい。だって、私たちの間には変えられない過去がある。傷つけられた、過去がある。
普通に気楽に『ハイ、そうですか。付き合いましょう!』って簡単に付き合うことなんて、できそうにない。
多分、龍聖は早くそのしがらみを飛び越えて、自分の胸に飛び込んできて欲しいんだろうけど…
《ダメダメ、ダメダメ!!
今度好きになる人は絶対に優しい人。私だけを好きでいてくれる人にするんだから!》
飛び込みそうになるたびに2年前の私がストップをかけにくる。進みたいのに進めない。信じたいのに信じられない。
目の前にいる龍聖があまりにも優しいから……こんな風に柔らかに微笑まれると、とってもとっても困ってしまう。