あなたと月を見られたら。


◇ ◇ ◇ ◇


そして玲子先生と別れた8時間後。


「うう…、私のバカ…!!」


私はまたしても龍聖のカフェに小走りで向かっていた。



玲子先生との打ち合わせを終わらせて、社に戻って仕事をしていたらアッと言う間に夜の10時になっていて。

ヤバイ!そろそろ帰んなきゃ!

そう思ってカバンを見たら…ペンがない。あの宝物のスワロフスキーのボールペンがなくなっていたのだ。


あのペンを使ったのは龍聖のお店が最後。ということは間違いなく龍聖のお店か、その間の道に落ちている。


アイツと1人で対峙するのかと思うと、諦めよう!とも思うけど……あのペンだけは諦めきれない!


だって…高かったんだもん!!!!
二本セットで1万近くしたんだもんー!そんなに簡単に一本5千円のペンを諦められるほど、私はセレブじゃないんだから!!


そう思ったら、仕方ない。
嫌だけど。本当に心のそこから嫌だけど店に探しに行くしかない。


そんなわけで今…私は龍聖のお店に向かって、絶賛小走り中。



街行く人はOLの小走りを物珍しそうな顔してみてるけど…そんなの関係ない。


だって…怖い。普通に歩いてたら悶々といろんなこと考えちゃいそうで怖い。


龍聖、変わってなかったな、とか。ギャルソン姿は素敵だったけど、会社いつ辞めたのかな、とか。どうしてやめたのかな、とか。いつから起業すること考えてたのかな、とか。


余計なことをたくさん考えてしまいそうで、怖かった。


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