あなたと月を見られたら。
うう…麻生さん。
それは正論!正論です!
だって世に言う『美人』は努力を怠らないもん。それに…結局ダメな男の人に引っかかる女の人ってそう言うダメ男が基本好きなんだよね?
わかってます。
わかっちゃいるけど、それをこの場で言わないでー!
苦悩する私に悪態をつき続ける、麻生さん。毒づくだけ毒付いた後、彼は運ばれてきたカフェラテを口に含んでチーズハンバーグにゆっくりとナイフを入れる。慣れた優雅な手つきでハンバーグを一口大に切ると
「ってかさー?牧村さんは努力の1つもしてないくせに龍聖には自分の理想を押し付ける。それに責任もなすりつける。それってハタから見てたら最高に胸糞悪いし、気持ち悪いよね。」
悪魔はそう言ってチーズハンバーグをポイっと口に投げ入れる。
「少女マンガじゃあるまいし、なんでもお見通しの優しい気遣いのできる王子様なんているわきゃないじゃん。先回りなんて無理無理、無理無理。アンタが恋愛してんのは二次元じゃなくて三次元!イタすぎるわー。いい加減目ェ覚めせ、って感じ??」
麻生さんの言葉は抜き身の刀のように、私の心をグサグサ抉る。そんな私を一度も見ることなく
「ってかいい歳こいて夢見すぎ。アホ丸出しで恥ずかしい。」
奴は気持ちいいまでにザクザクと私の心を切り刻む。
うう!!
わかっちゃいたけど、現実を突きつけられるって痛すぎる。
「だ、だけど女の子の憧れはやっぱり白馬に乗った王子様なわけで…!」
なんとか反論しようと口を開くと
「じゃあ聞くけど。今外出てさあ?白馬に乗った王子がガチに現れたら、アンタは王子についてくの?」
「う、、そ…それは…!!」
「でしょ?だから結局そんなの都合のいい妄想なんだってば。この世に王子様なんていやしない。いるのは生身のオトコとオンナだけ。綺麗なだけの恋愛なんて嘘くさいよ。だってさ??恋愛なんてそもそもがエゴとエゴのぶつかり合いなんだもん。汚くなきゃウソでしょう。」
悪魔は超必殺のミラクルパンチで私を完全にノックアウトしてくる。