あなたと月を見られたら。
「な…何言ってんのよ。」
「いいだろ?キスくらい。挨拶程度じゃん。」
ニヤニヤしながら、試すように笑う龍聖を見て、しみじみ思う。やっぱり…コイツ、性格悪い!!
玲子先生と来た時には知らんぷりを決め込んで紳士ぶってたクセに、何よこの態度!!しっかり覚えてたんじゃない、私のこと!!
昔の私なら言いなりになったと思う。龍聖の愛の奴隷と化していた私なら、どんなことでも耐えたと思う。
嫌われたくなくて、ケンカをしたくなくて、自分だけ我慢すればいいと思って、何もかも我慢してた私だもん。
だけど…それは恋の魔法にかかっていたからだ。魔法の解けた私はそんなバカな要求を飲み込むわけにはいかない。
「バカ言わないで。」
「は?」
「私はね。昔のオトコとキスする趣味は持ち合わせてないの。いいから返して。」
嫌われたっていい。ケンカになったっていい。だって私の黒歴史なんだもん、こいつと付き合ってたコトって。
ゆっくりと手を伸ばして
「返して。私のボールペン」
そう要求すると
「……アハハハ!参った!」
龍聖はとても嬉しそうにハハハと笑った。
は?
何がおかしいのよ。