あなたと月を見られたら。


ご、52……
どう見ても30代中盤に見えるこの人が…52歳?!


シミひとつ、シワひとつない、きめ細かなその肌。その張り。着てるものも若々しいし、それにスタイルだって抜群。龍聖と並んでも年の差がそんなにあるなんて思えなくて、、、むしろ年齢的にもとてもお似合いに見える風貌なのに。


う、嘘だ…!この人が龍聖と麻生さんのお母さんだなんて……!!


口をあんぐり開けて、信じられないコトの結末を見守っていると

「ってか優聖はアンタのせいで、しっかりくっきり歪んで悪い男になってるよ?どっちかといえば優聖の方が塔子さんの理想に近いんじゃないの?」

「………やーよ。
優ちゃんのことは可愛いとは思うけど顔が好みじゃないんだもん。」

「はぁ?!」

「光源氏ごっこするなら若紫は自分好みのイケメンの方がいいじゃない。優ちゃんはちょっと惜しいのよー。その点龍聖は理想的なマスクしてるのよねぇ。」

美女(いや…お母さん?)はハァーと魅惑的なため息を一つ吐いた後、イスに浅く腰かけた。


信じられない。
信じたくない。
でも…この人は龍聖の母親…なの??



『俺の母親は母であるよりも女である自分を優先する人だった。それが悪いとは言えないけど…俺には普通がよくわからない。』


昔、このお店で2人きりのディナーを食べた時。龍聖は自分のお母さんのことをこう語っていた。


男の人に依存して、いつも恋をしてなきゃダメで。女である自分を常に優先する母親で、母親らしい母親じゃない、とはわかっていたけど……。


「ね?龍聖。
私の理想はお金持ちで顔も良くて、身のこなしがスマートな男なの。その点で行くとアンタにはお金が足りないわけよ。ってことで…AGファイナンスで働いて、ジャンジャンお金を稼ぎましょうよ!」

「……あのね。何度も言ってるけど興味ないの。お引き取りください。」

「チッ。……可愛くないわね。」


こういうタイプだとは思ってなかった!

言ってたじゃない!?龍聖も「自分の母親は弱い人だ」って。もっとナヨナヨしていて儚げな人なのかと勝手に想像してたけど……


「…なに?なんかまだ文句があるの?」


忌々しそうに私を睨んで、悪態をつく、こんなに強い人がお母さんだなんて思いもしなかったんですけど!!!!

< 190 / 223 >

この作品をシェア

pagetop