あなたと月を見られたら。

「長かったよねー、着信拒否に完全無視の5日間。」

「う…っ。」

「意味がわかれば納得だけどさ?意味もわからず、弁解する余地もなく放置した挙句に何もなかったかのようにポイッと捨てるって…人としてどうなのかなぁ。」

「そ、それは…!!」

「美月は俺のこと鬼だの悪魔だの、人でなしだの愛がないだの、散々言うけど…自分も結構なモンだよね。」


そこまで言われて体の力がガクっと抜けて、口から魂がプシュ〜と浮いて出た。



う、ううー!!
耳が痛い!耳が痛いよ〜!!

ごめんなさいー!
ごめんなさい!!!



龍聖を疑うキッカケになって、結果として猛烈に嫉妬心を燃やしてた年上(いや、年増?)美女は彼のお母さんだったわけで。愛してる、って言って!とか口走ってしまったのは、大いなる誤解の上であったわけで!!



うぅ!
穴があったら入りたい、とはまさにこの心境だよぉ…。


龍聖の問いかけにマゴマゴして、オタオタして、しどろもどろで「あの…」とか「その…」とか口にしてると


「まぁ…美月の様子がおかしくなった日時を考えると、おのずと答えは見えるけどね。」


龍聖はニヤリと笑いながら、私を抱きしめていた手をパッと離す。そして私の正面に回り込んで顔を覗き込むと


「あの日…いたんだろ。」

「ふぇっ?!」

「しらばっくれても無駄だよ?あの日イルクォーレホテルにいたんだろ、美月。」


彼は確信めいたことを私に告げる。



え、ええ?!
なんでわかるの?!
なんで知ってるの??!


その言葉に絶句して「うん」も「いいえ」も言えずにいると


「ま、これは俺の予想だけどね?
どういうわけだか、あの日美月はイルクォーレホテルにいて。そうだなぁ…多分フロントの近くにあるオープンカフェにでもいたのかな?そこで…仕事終わりの俺と塔子さんとスティーブを見かけた。」



コイツ…

見てたの…??!!



「で、親しげに俺に抱きついてる塔子さんを見て『これは愛人だ!』と勝手に勘違いして、スーツ姿の俺を見て転職するのかとまたまた盛大に勘違いして、勝手に悲劇のヒロインごっこが始まって、挙げ句の果てに俺を試して、暴言吐いて着信拒否して完全無視して今に至る。ってとこじゃないの??」


龍聖は涼しい顔して、私の盛大な、壮大な勘違いをバシンバシン言い当てる。

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