あなたと月を見られたら。
私の腕の中で子どもみたいにスネる龍聖が可愛くてクスクス笑うと
「何、その笑い。バカにされてるみたいでなんかムカつく。」
ブスッとしたまんま、龍聖は面白くなさそうに私に不満の声を上げ始める。
あぁ、やっとわかった。
この人は生まれ変わったんだ。
大好きだったけど大嫌いだった、2年前の愛のない龍聖はもうどこにもいないんだ。
大丈夫。きっと信じて大丈夫。
だって…こんな表情初めて見たもの。子どもみたいにスネる顔も、泣き顏も、怒った顔も全部全部。こんな風に笑うなんて、こんな風に怒るなんて、私は何1つ知らなかった。
大丈夫。
目の前にいるこの人となら歩んでいける。一緒に壁を…乗り越えていけるはず。
そう思った私は…気づけばこんな言葉を口に出してた。
「今夜は…月が綺麗ですね。」
龍聖はピクリと体を震わせたけれど、私は彼の体を抱きしめ返して
「あなたのお部屋で見る月はきっと一番綺麗でしょうね。」
含みを込めてそう囁く。
龍聖はしばらく体を硬直させたまま身動き1つしなかったけれど…。しばらく時間が経った後フゥと大きなため息を吐いて
「俺は空に輝く月よりも、俺の目の前で幸せそうに笑ったり、一生懸命怒ったり、バカみたいに悩んだりする、美しい月の方が何よりも誰よりも魅力的なように思えます。」
そう言って私の体を抱きしめ返す。
「美月。」
「…うん??」
「君が望むなら、今夜一緒に月を見ますか??もちろん…俺の部屋で。」
私は彼の体にそっと耳を寄せ、彼の体温を確かめるように抱きしめると
「ヤだ。」
「はぁ?!」
「今夜だけじゃなくて、ずっとずっと一緒に綺麗な月を見ていたい。龍聖が……イヤじゃなければ。」
ずっと言いたくて言えなかったワガママを彼にぶつける。すると龍聖はハハッと笑って
「美月、焦らせないでよ。」
私の頭をポカリと殴る。そして私の頬に手を寄せると
「イヤなワケないでしょ?
こんな風に苦しいくらい切なくなる気持ちも、触れるだけで飛び上がりたいくらい嬉しくなる気持ちも全部美月が教えてくれた。俺をそんな気持ちにさせる人はきっと美月以外にいやしない。美月となら、一緒に月を眺めていたいと…心底願うよ。」
とても甘い龍聖の最上級の愛の告白。彼は彼らしくない甘い言葉と、とろけるような柔らかな笑顔を振りまいて、私の唇に爽やかなキスをする。