あなたと月を見られたら。

龍聖に抱きしめられながら。龍聖を抱きしめながら考えていたのは、そんなこと。


気まぐれで、計算高くて、本心を見せない彼。そんな彼の見せる甘えた声や柔らかな笑顔。穏やかな空気に私はきっとヤラれてしまった。悪魔みたいな魅力で私を虜にしてしまう龍聖が誰より憎らしくて、誰よりも愛おしい。


「好きだよ、龍聖…」


こっそり小さな声で呟いた愛の言葉は龍聖が聞きもらすはずもなく


「ありがと。だけどね?それはずっと前から知ってたよ。」


彼は不敵な言葉とともに、私のほっぺにキスをして…首すじに唇を寄せる。爽やかなキスとは程遠い、耽美な含みをのせたセンシャルなキス。


セックスの前のあの雰囲気を醸し出す龍聖の瞳とキスに一瞬ひるんで

「ちょ、ちょっと待って。」

静止の声をかけると

「ヤダ。待たない。
俺はもう十分すぎるくらい待った。」

龍聖は気にもとめずに私のシャツの中に手をスッと忍ばせてくる。



外には行き交う人の声。窓からは健康的なお日様の光が差し込んでくる。


「だ、ダメだってば!!
こんな昼間からそんなことしたらダメ!」

必死の抵抗は


「大丈夫。愛し合うのに時間なんて関係ない。」


スイッチの入った悪魔に一蹴される。


だ、だけど…!
これ、絶対に見えるよね?!
うっすら見えるよね?!


それにさ?
行為の最中にお客さん来ちゃったらどうしてくれるのよー!!


「ダメ!ダメったらダメ!!
言ったでしょ?今日の夜に龍聖のお部屋でお月見する、って。」

「あぁ…、でもそれはそれ、コレはコレ。」


にっこり笑って、何食わぬ顔して私のブラジャーのホックを外しにかかる龍聖に


「ダ、ダメーっ!
それ以上したら今度こそ絶交するから!」

「…はい??」

「私は愛のある人が好きだけど、世間一般の常識を守ってくれる人も好きなのっ!」


遠慮なく進む龍聖の手を必死に押さえつけて、うぎゃー!と叫ぶと


「……ヤダ。」


龍聖はブスッとした顔をしたまま、子どもみたいにスネ始める。


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