あなたと月を見られたら。

「ちょっと、龍聖!」

思わず非難の声をあげると

「残念でした。」

「…え??」

「美月はそう言えば逃げられると思ったんだろうけどさ??お客なんて誰1人として入れないから。」

「はい??」

「さっき塔子さんが出て行った後カランって木の音がしたでしょ?多分…CLOSEの看板出してくれてるはずなんだよね。」


え、ええ??!!


『龍聖のお母さんが扉を開けて出て行った後、扉の外からはカタンと小さな何かをひっくり返す音がした。』


あ、アレはその音だったのー?!



「さすがは俺の母親だよね。この後の流れをよくわかってるっていうか…同じ思考回路っていうか。」



ニンマリ笑って私の肩を押さえつけたまま唇にキスする、龍聖。まるで狼に狙われた仔羊のようにボーゼンとしながらされるがままになっていると


「…ってことで不安はもうないかな??美月。ないならこのまま美味しく頂いちゃうけど?」


悪魔は嬉しそうに尻尾を揺らす。
舌舐めずりをしながら私が堕ちてくるのを待ってる悪魔。計算高い、私の悪魔。


このまま…流されれば楽だ、ってわかってる。だってこのまま心だけじゃなく体も深く繋がることが出来たなら、何よりも幸せに思うに違いないから。


でも…でもさ??


「ここでするのは絶対イヤ!」

私はキイッと龍聖を睨む。
彼はハァ?と呟いてこめかみをピクピクさせてたけど

「ここは龍聖の大事な場所でしょう?そういうことしたら、その大事な場所を汚してしまいそうでイヤなの。」

そう訴えた後、彼は私をつかんでいた手の力を少し弱める。


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