あなたと月を見られたら。
むやみに高いヒールをカツカツ鳴らしながら目当ての洋書専門店に入っていって、玲子先生に頼まれた本を探す。
多分ジャンル的にお料理の棚を探せば見つかりそうな気がする…。
そんな予感がして料理本がたくさん置いてある棚を一ずつみていると
「ビンゴ!!」
簡単にお目当ての一冊、カフェの写真集をゲット!
あとはスウィーツのレシピ、レシピ…
無心になって一冊ずつ中を見て、どれがいいか物色していると
「そのジャンルならこの本がオススメだけど?」
「ゲッ!!」
東京一の最低最悪男が後ろから忍び寄ってきて、馴れ馴れしく声をかけてくる。
色素の薄い長髪を後ろで1つにキュッと結んで、真っ白のシャツにストールを首に巻きつけジーンズを合わせた、この男の名前は…
「なんでアンタがこんなとこにいるのよ、龍聖。」
最低最悪な私の、元彼。二度と会わないと誓った男。
「え?だってここ俺のお気に入りの店だもん。店のメニュー考えるのによく来てんだよ、ここ。洋書の品揃えがいいからな。」
チッ…勉強家め。
まさかこんなところで会うなんて。
予想もしない再々会にげんなりしながら
「今日は仕事は?」
素朴な疑問をぶつけると
「んー?今日は定休日。毎週木曜日は休みなんだよ、ウチ。」
私の隣に歩み寄って、私と同じスウィーツの本を物色しながら事も無げに龍聖が答える。
それを聞いた瞬間、私はこう思った。
これから木曜日は外回り禁止だな。